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新卒がタクシードライバーになるということ ―突っ込みどころ満載の日経のキャリアコラムを読む―

国際自動車が新卒のタクシードライバーを大量採用していることに関するコラムが、NIKKEI STYLEに掲載されていました。

突っ込みどころの多いコラムなので触れておきたいと思います。

 

新卒が続々とタクシー乗務員を仕事に選ぶ理由  国際自動車 大卒を大量採用

NIKKEI STYLE  2016/10/22

 

私の嫁も同業者なのですが、自分の子供が新卒で「タクシー乗務員になりたい」と言ったら反対する、ということでは一致しています。

それは何故か…

タクシードライバーには、新卒のタイミングでなくてもいつでもなることは可能だけど、新卒のタイミングを逃すと入れない企業は沢山あることが一つ目にして、最大の理由でしょう。

 

金銭面だけを考えたなら、タクシードライバーの平均的な年収は400円と言われていますので、20台前半の同世代の社員よりは高いものでしょう。

さらに、平均的な年収でタクシードライバーとして40年間勤めたとしたら、40年×400万円で1億6000万円の生涯賃金を得られますので、その面から考えても悪くないのかもしれません。

また、無事故・無違反で10年を経過すれば、個人タクシーになることも可能ですので、個人事業主としての可能性も広がります。

その側面からも、悪くないのかも知れません。

 

でも、タクシードライバーの場合、その職種からのステップアップのようなものは難しく、仕事も同じようなことの繰り返しになります。

経済的な理由だけを考えれば、新卒のタクシードライバーも有りなのかもしれませんが、仕事の醍醐味のようなものを感じようと思えば、新卒のタクシードライバーは無しだと私は思っています。

 

しかし、大学新卒者の就職事情はそこまで厳しいとしたら…

正社員になれるのはごくわずか、契約社員派遣社員になれれば良い方、こんな就職事情があるとすれば、タクシードライバーを選びたくなる気持ちも分からなくもありません。

 

つまり、こんなコラムが日経に載る社会が間違っているのかもしれません。

このコラムは、若者が社会に希望を持てないことの裏返しとして読むと、コラムの明るいテンションがとても物悲しく思えてきます。

 

ところで、コラム中に隔日勤務の明けを休みとして書かれていますが、明けを休みだと思っているタクシードライバーは少ないと思いますし、そもそも休みではありません。

最近、タクシーの求人で明けを休みと紹介するものが多発していますが、これは明らかにウソです。

 

そして、400万円の収入を得るのは、決して「余裕」ではありません。

コラムでは、休みが多いと応えている召田さんと、「余裕」と応えている松山さんというように別の人が別の項目に応えているので、「休みが多く給与も余裕」と読むのは違うのかもしれませんが、11勤務残業無しでは厳しいでしょうし、公出1の12乗務に法定内の残業をこなして見えてくるものではないかと思います。

それに、タクシードライバーの年収が400万円というのは、あくまでも平均値ですし、景気動向に左右されやすいものなので、東日本大震災リーマンショックなどの外的要因ががあると、一気に下落してしまいます。

また、風邪で乗務ができなかったり、免停によって乗れなかったり様々な個人的な要因を併せての平均値ということを理解していないとなりません。 

 

 さらに、タクシー業界を変えたいと記載されていますが、どう変えたいのでしょうか?

今のタクシー業界の何が問題で、何を変えたいのか、何を変えなくてよいのか、まるで読み取ることは出来ませんでした。

接客マナーの向上ですか?、道路を知らないドライバーの一掃ですか?

タクシー業界の平均年齢は50代半ばと言われてますから、若いドライバーが増えることは悪いことではないのですが、若いドライバーが増えたというイメージが欲しいだけなのでしょうか?

 

タクシー業界からすれば、若い人がドライバー職に就いてくれる環境が作られれば、平均年齢の問題から生じる先細り感や長年の課題である新陳代謝の問題への解決の糸口が見えてきます。

「業界を変えたい」というのは、そのレベルの意味なのかとも思ってしまいます。

 

いずれにしても、若者がタクシー業界を「ホワイト」と言ってしまうほど、社会は疲弊しているのでしょう。

それだけ将来に対する選択肢の少ない社会、それは、人口減少問題以上にこの国にとって厳しい問題なのかもしれません。

 

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新卒が続々とタクシー乗務員を仕事に選ぶ理由  国際自動車 大卒を大量採用

NIKKEI STYLE  2016/10/22

 新卒でタクシードライバーとして入社する大卒社員が増えている。タクシー大手の国際自動車(東京・港)は、2012年は10人だった大卒ドライバーを、2015年には109人まで増やした。17年卒では新卒全体で180人を目指すなど、新卒有効求人倍率が1.74倍と売り手市場が続くなか、新卒採用市場に異変を起こしそうな新たな潮流だ。なぜタクシードライバーなのか。大卒の若手社員たちに話を聞いた。

 

■「なんてホワイトな仕事なんだろう」

 東京・赤坂にある国際自動車の本社会議室。ここに毎月末、16人の若手社員が集まり、17年卒の新卒採用、18年卒のインターンに向けた議論を重ねている。彼らは全員20歳代、半数以上が女性社員だ。ほとんどは日ごろ、ドライバーとして都内を走る「タクシー女子」や「タクシー男子」だ。「ジョブトレーニング」という社内公募制度で3カ月ごとに入れ代わり立ち代わりで人材採用課に出向する仕組みだ。この間、ドライバーとしての仕事は一切せず、採用活動の業務に携わる。今年の新卒ドライバーの採用目標は150人。優秀な大学生に自社を選んでもらうためのアイデアを出し合うとともに、前月の達成状況を発表し、振り返る。

 人材採用課に出向していた三鷹営業所(東京都三鷹市)の召田春花さん(23)は、15年に東京経済大学を卒業後、新卒でドライバーとして入社し、タクシー女子となった。「もともと、タクシードライバーという選択肢はなかったが、今は後輩にも勧めています」

 就職活動では、なかなか自分のやりたいことが見つからなかった。早い時期に大手外食チェーンから早々に内定はもらっていたものの、決めきれずに活動を続けていたときに就活サイトで国際自動車の募集を見つけて訪問。会社説明会での社員の親しみやすい雰囲気にひかれ、総合職で応募した。面談を重ねるうちに「ドライバーもいいな」と感じるようになった。タクシードライバーの待遇のよさを強く訴える召田さん。その1つは休暇の多さだ。

 

 「1カ月の勤務は11日です。大学生のときよりも遊んでいるかも」。

 

 国際自動車の勤務体系は、朝から夕方まで働く「日勤」と、夜から朝まで働く「夜勤」、1回の勤務で2日分働く「隔日勤務」の3種類がある。まとまった休みを好む若手ドライバーは、隔日勤務を選ぶ人が多い。

 召田さんは、午後4時から翌日午前10時まで勤務し、そのあとは休み、という勤務体系だ。通常は月に11日の勤務が多く、多くても法律で13日までの勤務と決まっているので、3連休を2回取れる月もある。営業所には仮眠室もあるので、業務中でも体力的にきつくなれば休んでいる。

 「残業はないし、連休も多いし、ほかの会社に入社した同級生の話を聞くと、なんてホワイト(労働条件が良い)なんだろうと思う」(召田さん)。

 

■「同級生の倍」 給与はいうことない

 給与の高さも魅力的だ。基本給と売り上げに応じた成果給で決まり、月の売り上げの約半分が給与として振り込まれる。「自分が頑張った分だけ給与がもらえて、あとどのくらい頑張れば目標額に達するか分かることもやりがいになる」と召田さん。厚生労働省によると、2015年の大卒初任給は20万2000円。年収にすると300万以下だが、ドライバーの場合、年収400万円台は「余裕」で、腕のいいドライバーなら600万~700万円を稼ぐ1年目もいる、という。

 13年に立正大学を卒業後、タクシードライバーとして入社した松山航希さん(26)も、2年連続で人材採用課に出向して新卒採用に関わった一人。待遇のよさや、仕事のやりがいを後輩たちに伝えたい、という。

 松山さんは「卒業後に同級生と給与を比べたところ自分は倍もらっていた。もっともらえる仕事もあると思いますが、これだけ休みもある、という条件も加えたらなかなかないはず」という。

 

■社内恋愛も増加

 「タクシー運転手はオジサンの仕事」。そういったイメージから人間関係に課題を感じる人もいる。国際自動車に勤めるドライバーの平均年齢は56歳、新卒のドライバーにとっては父親世代だ。しかし、入社の決め手を「社内の雰囲気のよさ」という人も少なくない。

 国際自動車は、特に大卒のドライバーを採用するようになってから、入社して2年足らずの社員を営業所のドライバーを束ねる管理職の「班長」に抜てきするケースが増えてきた。やる気ある若い世代の熱気で現場の士気をあげることと、将来の管理職候補を育てることが主な目的だ。

 「父親のような年齢の人がドライバーとして後輩になることもあるが、それが当たり前。年功序列のような上下関係もないし、逆に社会人としての常識を学ぶこともある」と松山さんは話す。

 社員同士の仲の良さを反映してか、社内恋愛の多さを指摘する社員も多い。入社2年目のある女性ドライバーは「私も社内恋愛中です。同僚とダブルデートすることもあります。相手もドライバーで、互いの仕事に理解もあるし、休みをあわせられるのでうれしい」と告白する。「営業所によっては、同期入社した女性ドライバーの半分以上が社内恋愛中」と話すドライバーもいた。営業所を超えた部活もあるなど、仲のよさを否定する社員はいない。

 

■業界を変えたい

 大東文化大学を卒業後、15年に入社した広村舞さん(24)は、入社2年目で約100人ものタクシードライバーを束ねる班長に抜てきされた。車が好きだったことがきっかけでタクシー業界に飛び込んだ広村さんは、「入社を決めてから、タクシードライバーという仕事に偏見があることを知った。業界を変えたいと思ったし、その会社の覚悟を強く感じたので入社を決めました」という。

 利用者から「若いのに何でタクシー運転手になっちゃったの」といわれることもたびたびある。営業所の同僚のなかでも、タクシードライバーは「最後につく仕事」と考える人はまだ多いという。

 「逆に若いドライバーを街にあふれさせたい。『なんでタクシー運転手なの』と聞かれたら、『業界を変えたいからです』と街の至るところで若いドライバーが伝え続ければ、きっと変わると思う」と広村さんは熱を込める。

 人材採用課の柴田幸範さん(26)も業界変革を強く意識する一人だ。早稲田大学を卒業後、ドライバーとして入社してからこの仕事の魅力を知り、偏見と実態のギャップを埋めようと人材採用課に異動した。

 「タクシー業界の課題は高齢化です。配車サービス大手の米ウーバーが上陸して、自家用車を使って有償で人を運ぶ『ライドシェア』も脅威です。我々はとても苦しい時期だと思う。でも我々には、歴史のある会社だからこその運転の技術や、接客のノウハウもある。2020年の東京五輪では、その力が生かされるはず。ずっとこの会社で働き続けたい」という。

 新卒で入社した若いドライバーたちは、サービス向上への意欲も高い。「古い価値観を変えなければ」と口をそろえる。横柄な接客や、道を学ばないことによるクレームが、タクシー全体のイメージを落とす、というのだ。「クレームが多い人は決まっているし、まったくトラブルのない人もいる。まずお客様が乗車したら、目を見てあいさつして急ぎかどうかなど、ニーズが何か尋ねる。まず、個人の接客スキルを上げることが重要だ」と前述の松山さんは指摘する。

 

■バンドマンとしての夢

 ドライバーのなかには、他に夢や目標がある人もいる。シフトで時間の調整ができ、かつ正社員の待遇が保証されているからだ。13年に静岡大学工学部を卒業後、新卒で入社した安田聡太さん(29)は、「将来はミュージシャンとして生きていきたい」という夢をかなえるため、両立できる職業を探していたときにタクシードライバーに出合った。会社説明会で「音楽をやりたい」と現場にいた国際自動車の社員に話したところ、「その夢を応援します」といわれたことが入社を決めた理由だ。

 出勤日はライブのある日を優先して決めている。仲間と組むバンド活動と、一人での弾き語り、あわせて月5、6本のライブ活動をこなす日々だ。将来は音楽で食べていきたい、とも思う一方で、社会人としてのマナーや人を見る目が養えたこともいい経験だという。「ビジネスマンなら急いでいたり、お年寄りは体が悪いからゆっくり走ってほしい、と思っていたりする。人を観察する癖がつきました」。安田さんは、自分の働き方や生き方を見て「タクシー業界のイメージが変わった」という人が一人でも増えたらうれしい、と話す。

 

■ウーバーと戦えるか

 16年現在、国際自動車に大卒で入社したドライバーはすでに400人を超える。国際自動車に入社したドライバーのなかには、「四年制大学まで出したのに、タクシードライバーなんて」と親に泣かれた、という人も珍しくない。しかし、新卒のタクシードライバーの採用に力を入れているのは、国際自動車だけではない。競合である日本交通も、17年卒の新卒で150人の採用することを発表した。入社当初は、ドライバーとしての勤務だ。大和自動車交通も16年に初めて新卒者を5人採用、17年は6倍の30人を目指している。

 若手ドライバーたちは「待遇の良さ」「人間関係」、そして「業界を自分の手で変えられる」というやりがいを口にする。国際自動車の西川洋志社長は採用の現場に携わる若手に対し、「君たちが国際自動車とタクシー業界を下支えする」と激励した。ウーバーなど、競合サービスとどう戦っていくのか。未来は偏見なき若い世代の「プロ意識」にかかっている。

(松本千恵)